SCTサポートスタッフの中井由梨子(mosaique-Tokyo)です☆
ワークショップ、第2日目。
使用する台本は、”スケッチ台本”です。2021年SCT製作の、
第1回・第2回のシーンは、昼は男性、夜は女性に変化してしまうという特異体質を持つ主人公のミナミが、自分の勤め先である税理士事務所を辞めようとするところから始まります。またさらに遡って三年前、彼が初めてその事務所にやってきた出会いのシーン。ミナミが慕う事務所の所長、野渡丘(のどおか)と、ミナミに好意を寄せる税理士、律子(りつこ)の微妙な三角関係が始まるシーンです。
現段階の台本を”スケッチ”、と私が呼んでいる理由は、撮影台本になる前の段階のラフ台本、という意味からです。アイデアのメモ書きだったり、登場人物のキャラクターを掘り下げるためのシーンイメージだったり…と、ラフに書いています。本番用の本は、シーン設定とか全体のタイムを気にしながら書くので、制約がかかります。制約の中でどう描くか!?みたいなスリルは、私は大好きなんだけど、それはそれとして、スケッチは好きなだけ好きなように書いていくので、自分でも思ってもみなかったアイデアが出てきたりするので、大事にしている製作工程だったりもします☆
実際、撮影台本になる時には使われないシーンになっちゃうのかもしれませんが、こういったシーンを多く書けば書くほど、自分の中でも作品が血肉となっていくので、より骨太なものを作る事ができるんです。何事にも、無駄はない(笑)
1日目、手探り状態のままシーンをあたってみて、一晩じっくり考えて、考えた結果を表現してみるとあら不思議。
演技が熟成されている!?
一晩寝かせたカレーみたい??
写真左から)宮下涼太さん、吉木遼さん、小貫莉奈さん
……そうなんです。SCTのワークショップが2日連続、というのはそこがポイント。たった一晩置くだけで全員の芝居が昨日とはまったく違っています。何事も継続が大事、と言われますが、
私たちにとって大事なのは
「あ、この台詞ってもしかして…」
「あ、そうか。だからここでこんなことをしたんだな」
という、「あ、」という気付き。
たった一つでもいい。
新しいことに気付かせてもらうと、自分でもびっくりするくらい、
新しい表現方法を発明することができるんです!!
モノづくりには常に発見と発明が必要とされるし、もちろん役者も日々何か新しい表現方法を発見し続けなければ、発信側に居続けることはできない。そのためには、まず気付かなければならない。
でも、自分で「良いことに気付こう!」なんて思って気付けるもんじゃないですよね。
気付きって、自分でコントロールできないもの。
だから、神様の領域なんです。
芸能の神様に可愛がられるには、
これしか、方法はありません。
台本を読んで読んで読んで読み倒した人ほど、神様はたくさんのギフトを贈ってくれます。そしていつの間にか、多くの人の前に立てる役者に引き上げてもらえるのです☆
SCTワークショップでは、この”気づき”を得る自分になれるプロセスを重要視しています。
写真左から)吉木遼さん、安楽楓さん
写真左から)橋谷拓玖さん、杉山宗賢さん
シーンスタディは、演じる時も大事ですが、もっと大事なのは他人の演技を見る時です。
誰かの演技を見て、何を感じるか。そしてどう自分に活かすのか。これも気づきの一つですね。ただぼんやりと眺めていては、気付きは少ないかもしれません。けれど、前日に台本について考えて、気付いて、自分の芝居を工夫してきた人は、見ている時も、
必ず何かに気付きます。
そりゃ、そうですよね。台本を知れば知るほど、答えはたくさん出てくるし、自分の中にたくさんの答えがある人は、人の答えにも敏感だから。
写真左から)吉木遼さん、沖崎健司さん、松谷鷹也さん、松浦正太郎さん。芝居している吉木さんと松浦さんをじっと目で追いかけている沖崎さんと松谷さんが印象的。
写真左から)橋谷拓玖さん、杉山宗賢さん
写真左から)沖崎健司さん、松谷鷹也さん、福岡瑠璃さん。前日と同じ組み合わせでのシーンでしたが、3人それぞれの”気づき”が芝居を全く変えていてシーンの意味合いまで違って見えました。松谷さんは、前日と同じ役をやりながらアプローチを思い切り新しいものに変えて挑んでいました。
さて、次回は第3回。10月31日(土)です。
新しいスケッチ台本は今週末には受講者の皆さんにお送りする予定です☆